【栗の呼吸 壱ノ型】
栗は落果したものだけ収穫します。
落果した瞬間から呼吸による糖の消失が始まります。
もう葉から光合成で作られた糖を受け取ることができません
つまり、収穫が遅れれば遅れるほど甘さが失われていく果実です
そんな【作物自身の呼吸】によって味が劣化する作物はたくさんあります。
例① 【とうもろこし】
・とうもろこしは朝採れが劇的に美味しい。
・日中の光合成により葉で作られた糖分が夜間に実へ送られる。
・気温が高くなると呼吸が活発化して糖が消費されてしまう。
例② 【枝豆】
・前日収穫した枝豆は当日収穫分と比較するとショ糖量は半減。
作物によりますが、味は鮮度によって激変してしまいます。
そんな訳で、
秋になると松尾栗園では毎朝夜明けと同時に一刻も早く収穫をスタートします
「鮮度命」なのでたくさんアルバイトを雇用して一刻も早く収穫を終わらせます。
大人数で収穫、選果を早く終わらせて、当日中に必ず冷蔵庫へ入れます。
栗は【冷やすと熟成してもっと甘くなる】性質を持っています
栗は種です。
寒さを感知すると、デンプンを分解して糖に変えエネルギーを蓄えて冬を越す性質を備えています。
★冷蔵熟成の性質を上手く使いこなせる方法
デンプン分解による糖の生成 > 呼吸による糖の消失
冷蔵庫の温度が高いと、せっかくデンプン分解で増やした糖も呼吸でどんどん消費されちゃいます。
逆に冷やし過ぎると、栗果実が凍ってしまい細胞破壊して味が劣化します
栗果実はマイナス3℃で凍ります。
冷やせば冷やすほど呼吸は抑制されるので、
最高糖度を目指すなら栗果実の中心部がマイナス2℃になればベストです。
一歩間違えば凍らせてしまうので本当にリスキーです
でも、去年12月に中心温度マイナス2℃を45日間維持した栗を焼いて食べました。
16年間の栗農家人生で最高レベルの味でした。
その焼き栗の糖度が何と、まさかの40度超えでした
0℃よりマイナス1℃、マイナス1℃よりマイナス2℃。
たった1℃の差で糖度も食べた後の感動の大きさも変わることを知りました
16年かけてやっと、
デンプン分解による糖の生成 > 呼吸による糖の消失
を具現化できたと思えました。
今年の松尾栗園の目標はシーズン通して、平均糖度40度の焼き栗を作り続けることです
逆算すると、
糖度40の焼き栗を作るためには、
冷蔵熟成後の生栗の糖度が25度必要。
収穫直後の生栗の糖度は12度必要。
今、栗のイガの大きさはピンポン玉ぐらいです。
収穫開始まで後1ヶ月半。
たっぷり栗果実にデンプンが蓄えられるよう、
糖度12度以上になるように、
これからの枝葉管理でしっかり光合成環境を整えていきます