「焼き栗」は全国各地で販売されています。
圧倒的に中国産が多いですけど(^_^;)
なぜか、栗ペーストとなると、ほとんど「蒸し栗」ペーストになります。
皮ごと蒸す、むき栗にしてから蒸す、
普通の鍋、圧力鍋、せいろ…蒸し栗の製造工程は製造メーカーによって様々です。
不思議と、国産で「焼き栗」ペーストって全く作られていないのです。
考えられる理由は、あくまでも私の推測ですが、
① 大量生産できない。
焼き栗釜に入れる栗はMAX3kg。
100kg焼こうとすると、30回に分けて焼くことになる。
(倍の6kg釜もあるが、焼きムラがひどく品質が落ちる)
② 焼栗釜の掃除とメンテナンスが大変。
1回焼く度に釜内に焦げや煤がこびりつく。
次の栗を投入する前に毎回洗う必要がある。
③ ロスが多い。
焼いた栗にも焦げや煤が付く。
その異物除去は手作業になるため、人件費もかさむ。
④ 原材料費が一番高い。
焼き栗は水分が飛ぶ。蒸し栗は水分を吸収する。
同じ1kgのペーストでも、焼き栗の方が使用する栗の量は多く必要となる。
⑤ 見た目が美しくない。
蒸し栗の方が黄色。焼き栗は茶色。しかも渋皮が溶け込んで統一感のない色になる。
業務用栗ペーストは和菓子、洋菓子に使用されるため、見た目の美しさも大事。
これだけデメリットがあるのに、
どうして松尾栗園は焼き栗ペーストを作るのか?
答えは1つです。
焼き栗しか知りません!(笑)
私は2006年に栗農家になると同時に、焼き栗職人の道も歩み始めました。
以後14年間、焼き栗1品だけで今日までやって来ました。
私の焼き栗の年間製造量は約4t。焼き栗釜に1回平均2kg投入するので、
毎年2,000回栗を焼き、それだけを10年以上ひたすら続けてきました。
美味しい蒸し栗の作り方は知りませんが、
美味しい栗の焼き方は常に考え続けています。
誰も作っていないのなら、1回作ってみよう。
どうせ日本で初めて作るんだったら、
すぐ簡単に真似できないぐらい美味しい焼き栗ペーストにしたい!
そう思って試作繰り返すこと数十回。
とは言っても、原材料は栗だけ。
調味料や添加物で味は変えられない。
何をそんなに試作するのかと言ったら、
焼き栗の火力と圧力の調整、その2点だけです。
微妙な火加減と加圧の調整を何度も何度も繰り返して、
「まだまだ、この味じゃ物足りない」
「これを食べてもリピートしようと思わないなぁ」
「前回の方がまだ美味しかった」
「もう砂糖足したら?」
何度も嫁さんに本音で跳ね返されて、
その悔しさをバネにまた微調整を繰り返し、
「この味だ!」と1年かかってようやく見つけた、
現時点でのベストオブ松尾家の焼き栗ペーストです。
皮付きの焼き栗ではできないことをペースト製造では行っています。
それは、見た目に一切こだわらない!
思いっきり世間の需要に逆行しています(笑)
でも、
渋皮溶け込んで焦げ目がつくぐらい、圧力釜の限界まで茶色く焼いた方が美味しいのですよ~!
通常、焼き栗は圧力0.6~1.0Mpa(メガパスカル)の焼き加減です。
品種、サイズ、外気温、生栗の水分含有率など様々な条件によって調節します。
今回の焼き栗ペーストは圧力1.3Mpa!
皮付き焼き栗でそこまでの見た目にしちゃうと売れなくなります(^_^;)
焼き栗は見た目も含めて脳が「美味しそう」と思って食べるから、
見た目にも気を配って焼いています。
焼き栗ペーストはただ「栗の味」だけにこだわりました。
収穫直後の生栗の糖度が10。
マイナス1℃で45日間冷蔵熟成して糖度20。
焼くことで水分飛んで、甘味が凝縮して、とうとう栗だけで糖度30超えました!
ちなみに蒸し栗ペーストは水分吸収するので、
熟成栗を使ったとしても糖度が20以上に上昇することはありません。
でも、途中から糖度なんてどうでもよくなりました。
とにかく大事なのは自分たちの舌。
糖度計より感覚、味覚で焼き栗のベストを探し当ててきました。
それだけ高温高圧で焼くと飛ぶ水分量も多くなって、
焦げ等の異物除去もした結果、
商品化率は平均50%を切ってしまいました(-_-;)
つまり1kgの焼き栗ペーストを製造するのに、2kg以上の生栗を使用しています。
1粒平均25gとして、1kgの焼き栗ペーストに約80粒以上の栗が入っています!
こんなに原材料費のかかるペースト、誰も作りませんよね(笑)
加糖栗ペーストの平均小売価格って、1kg 4,000円前後です。
私の無糖焼き栗ペースト、生産コストだけで\4,000余裕で超えちゃいました(-_-;)
コストカット…原材料費の次に高いのは皮むき人件費。
焼き栗はデンプンの粘土が高いので、機械による皮むきができません。
どうしたら早く丁寧に皮むきできるか?
スタッフを固定して、試行錯誤しながら皮むきのエキスパートになるべく猛特訓。
鬼皮割り → 渋皮はがし → 異物除去 → 最終チェックの4役に分けて、
当初1㎏あたり1時間半かかっていた作業を55分にまで短縮しました。
でも、相場よりはまだまだ高い…。
果たして、これが売れるのか? どんな評価を受けるのか?
ドキドキしながら、昨年11月に県内で行われた3つの商談会に参加しました。
(2019/9/1作成)
つづく