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栗の裏情報⑥ 無糖焼き栗ペースト開発編

「焼き栗」は全国各地で販売されています。

圧倒的に中国産が多いですけど(^_^;)

 

なぜか、栗ペーストとなると、ほとんど「蒸し栗」ペーストになります。

皮ごと蒸す、むき栗にしてから蒸す、

普通の鍋、圧力鍋、せいろ…蒸し栗の製造工程は製造メーカーによって様々です。

 

不思議と、国産で「焼き栗」ペーストって全く作られていないのです。

 

考えられる理由は、あくまでも私の推測ですが、

 

   大量生産できない。

焼き栗釜に入れる栗はMAX3kg。

100kg焼こうとすると、30回に分けて焼くことになる。

(倍の6kg釜もあるが、焼きムラがひどく品質が落ちる)

 

   焼栗釜の掃除とメンテナンスが大変。

1回焼く度に釜内に焦げや煤がこびりつく。

次の栗を投入する前に毎回洗う必要がある。

 

   ロスが多い。

焼いた栗にも焦げや煤が付く。

その異物除去は手作業になるため、人件費もかさむ。

 

   原材料費が一番高い。

焼き栗は水分が飛ぶ。蒸し栗は水分を吸収する。

同じ1kgのペーストでも、焼き栗の方が使用する栗の量は多く必要となる。

 

   見た目が美しくない。

蒸し栗の方が黄色。焼き栗は茶色。しかも渋皮が溶け込んで統一感のない色になる。

業務用栗ペーストは和菓子、洋菓子に使用されるため、見た目の美しさも大事。

 

 

これだけデメリットがあるのに、

どうして松尾栗園は焼き栗ペーストを作るのか?

答えは1つです。

 

焼き栗しか知りません!(笑)

私は2006年に栗農家になると同時に、焼き栗職人の道も歩み始めました。

以後14年間、焼き栗1品だけで今日までやって来ました。

私の焼き栗の年間製造量は約4t。焼き栗釜に1回平均2kg投入するので、

毎年2,000回栗を焼き、それだけを10年以上ひたすら続けてきました。

美味しい蒸し栗の作り方は知りませんが、

美味しい栗の焼き方は常に考え続けています。

 

 

誰も作っていないのなら、1回作ってみよう。

どうせ日本で初めて作るんだったら、

すぐ簡単に真似できないぐらい美味しい焼き栗ペーストにしたい!

 

 

そう思って試作繰り返すこと数十回。

 

とは言っても、原材料は栗だけ。

調味料や添加物で味は変えられない。

何をそんなに試作するのかと言ったら、

焼き栗の火力と圧力の調整、その2点だけです。

 

微妙な火加減と加圧の調整を何度も何度も繰り返して、

 

「まだまだ、この味じゃ物足りない」

「これを食べてもリピートしようと思わないなぁ」

「前回の方がまだ美味しかった」

「もう砂糖足したら?」

何度も嫁さんに本音で跳ね返されて、

その悔しさをバネにまた微調整を繰り返し、

 

「この味だ!」と1年かかってようやく見つけた、

現時点でのベストオブ松尾家の焼き栗ペーストです。

 

 

皮付きの焼き栗ではできないことをペースト製造では行っています。

 

それは、見た目に一切こだわらない!

 

思いっきり世間の需要に逆行しています(笑)

 

でも、

渋皮溶け込んで焦げ目がつくぐらい、圧力釜の限界まで茶色く焼いた方が美味しいのですよ~!

 

 

通常、焼き栗は圧力0.61.0Mpa(メガパスカル)の焼き加減です。

品種、サイズ、外気温、生栗の水分含有率など様々な条件によって調節します。

今回の焼き栗ペーストは圧力1.3Mpa

 

皮付き焼き栗でそこまでの見た目にしちゃうと売れなくなります(^_^;)

焼き栗は見た目も含めて脳が「美味しそう」と思って食べるから、

見た目にも気を配って焼いています。

 

 

焼き栗ペーストはただ「栗の味」だけにこだわりました。

 

収穫直後の生栗の糖度が10

マイナス1℃で45日間冷蔵熟成して糖度20

焼くことで水分飛んで、甘味が凝縮して、とうとう栗だけで糖度30超えました!

 

 

ちなみに蒸し栗ペーストは水分吸収するので、

熟成栗を使ったとしても糖度が20以上に上昇することはありません。

でも、途中から糖度なんてどうでもよくなりました。

とにかく大事なのは自分たちの舌。

糖度計より感覚、味覚で焼き栗のベストを探し当ててきました。

 

 

それだけ高温高圧で焼くと飛ぶ水分量も多くなって、

焦げ等の異物除去もした結果、

商品化率は平均50%を切ってしまいました(-_-;)

 

 

つまり1kgの焼き栗ペーストを製造するのに、2kg以上の生栗を使用しています。

1粒平均25gとして、1kgの焼き栗ペーストに約80粒以上の栗が入っています!

こんなに原材料費のかかるペースト、誰も作りませんよね(笑)

 

 

加糖栗ペーストの平均小売価格って、1kg 4,000円前後です。

 

私の無糖焼き栗ペースト、生産コストだけで\4,000余裕で超えちゃいました(-_-;)

 

 

コストカット…原材料費の次に高いのは皮むき人件費。

 

焼き栗はデンプンの粘土が高いので、機械による皮むきができません。

どうしたら早く丁寧に皮むきできるか?

スタッフを固定して、試行錯誤しながら皮むきのエキスパートになるべく猛特訓。

 

鬼皮割り 渋皮はがし 異物除去 最終チェックの4役に分けて、

当初1㎏あたり1時間半かかっていた作業を55分にまで短縮しました。

でも、相場よりはまだまだ高い…。

 

 

果たして、これが売れるのか? どんな評価を受けるのか?

ドキドキしながら、昨年11月に県内で行われた3つの商談会に参加しました。

2019/9/1作成)

 

つづく

 

【次回予告 栗の裏話⑦無糖焼き栗ペースト営業編】