今は植物工場で野菜が作れる時代になってきました…
でも、栗の樹の重さは成木になると5トンを超えます。
それを支えるのは土=大地じゃないと無理です。
人間は口から食べ物を摂取して、
主に3大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)が体内でエネルギー源や身体をつくる働きをして、
ビタミン、ミネラル等が身体の調子を整える働きをしますよね。
だから、何を食べるかってめちゃめちゃ大事ですよね。
栗の樹などの植物は「土」から養分を摂取します。
だから、樹形の仕立てと同じくらい土作りはめちゃめちゃ大事です。
でも、今、私の栗園は5年前から無肥料栽培なのです。
「えっ! 無肥料で栗の樹1,050本ちゃんと育ってるの!?」
とよく聞かれますが、樹は元気に生きてくれています(笑)
無肥料の大前提として、
今、私の栗園の土壌には施肥する必要がない=養分が蓄えられている状態なのです。
人間と土の大きな違いは、
毎日のように食べ続けなくてもいいところです。
土には保肥力というものがあるのです。
農家の世界で、保肥力はCECという専門用語で表します。
ちょっと詳しく説明すると、
土というのは、電気的にマイナスの性質があります。
それに対し、カルシウムやマグネシウム、カリウム等の養分はプラスの性質をもっています。
という事は、マイナス(土)と、プラス(養分)ですから、くっつくわけですよね。
この、土が養分を吸着する力が、CEC=保肥力というわけです。
CECの値が大きければ大きいほど、肥料をつなぎとめる力が大きい。
例えば、粘質土壌のように土壌の粒子が細かければ、CECの値は高くなり、
逆に砂質土壌は、値が小さくなります。
私の栗園は3ヶ所中2ヶ所でCEC値が40近くあります。
40という値は、日本国内では有数のかなりCEC値の高い土壌です。
雨が続くと長靴に土がベタついて足取りがどんどん重くなるぐらいの粘土質です。
反対に、残りの1ヶ所はCEC値20以下と保肥力の低い畑です。
この畑だけは、そろそろ施肥(養分補給)の時期が近づいています。
農家は自分の畑のCEC値を知っておく必要があります。
CEC値は同じ地域であったとしても、土壌の性質によって全然違います。
ところが、行政や農協などの農業普及機関で、
いまだにCEC値を測定する指導を行っていない地域もまだまだ数多くあります。
CEC値が高いところも低いところにも同じ栽培マニュアル、施肥設計を渡すのです。
CEC値=保肥力が低い土壌に多くの肥料を撒いたところで吸着できずに流亡するだけです。
肥料代の無駄です。環境汚染になります。
CEC値が高い土壌に毎年少しずつ施肥したところで全然腹の足しになりません。
思い切った初期投資をして、大がかりな土壌改良をした方が断然いい畑になります。
私の場合、就農4年目に思い切って栗園全面を土壌改良しました。
苦土石灰50トン、牛豚糞90トンを散布して、
ほぼ1年間ひたすら耕運機をかけ続けました。
その結果、
土壌中のカルシウム、マグネシウム、カリウムのミネラルバランスを6:2:1にだいたい整えました。
この6:2:1というのは健康で美味しい作物ができる黄金比率です(笑)
翌年は鶏糞を計130トン散布&耕運して、
リン酸含有量を土壌100g中30mg程度に補給しました。
来る日も来る日も1袋20kgの重い肥料を運んでは撒いて、耕運機かけて…
今となってはもう二度とやりたくない、軍隊の訓練のような2年間でした(^_^;)
2年間クタクタになって耕運機かけ続けた甲斐あって、
栗の根にとって、最低限必要な養分を吸収できる理想的な土壌が整いました。
土壌酸度(ph)も、強酸性(4.0)から栗が好む弱酸性(5.5)に改良できました。
土壌改良後も、2,3年に一度は専門家に土壌の成分分析を依頼しています。
10年近く経ってもまだまだ栗の根にとって必要な養分は保持できています。
それぐらいCEC値40というのは保肥力の高い土壌なのです。
そんな化学的根拠に基づいて、
無肥料栽培が5年間継続できています。
(2019/9/1作成)
つづく