6月、梅雨時に栗の花が開花します。
雨が降れば花粉は飛散しづらいので、受粉率低下します。
何も梅雨時に咲かなければいいのにと思ってしまいますが、
栗の花粉は水分を吸収することで花を長持ちさせているそうです。
そういった子孫繁栄の工夫で縄文時代から生き残ってきたのですね。
栗の花は穂になって咲くので花穂と呼んでいます。
雄花しかつけない雄花穂と、雌花と雄花を両方つける帯雌花穂の2種類あります。
パッと見て目につく、白くて長いしだれ状の花穂が雄花穂です。
一方、帯雌花穂は雄花穂の根元に、隠れるように雌花が付いています。
今の時期はよく目を凝らさないと雌花を見つけられません。
雌花はすでにイガグリの形をしています。
雌花が受精してイガの中で子種(果実)が育っていきます。
その子種の成長に従い、イガもどんどん膨らんでいきます。
人間のお母さんのお腹と似ていますね。
「今年はたくさん花が咲いた!」 と喜んでいても雄花穂ばかりだったら大不作です。
単純に、「この枝なら帯雌花穂が咲く」と予測される枝が数多くあれば豊作になります。
でも、豊作過ぎると必ず成り疲れで樹が弱まり、翌年は不作になりがちです。
栗農家は、毎年、樹を健全に育てつつ安定生産する栽培技術を身に付けないと生きていけません。
栗花粉の媒介(送粉)方法は風媒介70~80%とも言われています。
栗の雄花は人間の男性の精液とまったく同じ匂いを放ちます。
その強烈な匂いがハチ類を中心にいろんな虫を呼び寄せています。
虫媒介率はもっと高いのでは? と個人的に感じています。
栗は自家不結実性と言って、同じ品種の受粉ではほとんど結実しない性質です。
最低10m以内に違う品種を混植する必要があります。
庭に栗の樹1本植えても、違う品種2本ある場合と比べたら着果数の差は歴然です。
雄花に対する雌花の数の比率は極めて少ない。
雄花からしたら、雌花に受精するには競争率高過ぎます。まさに高嶺の花。
何とかして自分の花粉を、隣の樹の雌花の元に運んでもらいたくて、
あれだけの匂いを発して虫を呼び寄せているのでしょうね。
・子種を包み育てるイガ
・雄の匂い
・受精の競争率
・自分の身内とは結婚できない
何かと人間との共通点が多い栗の受粉事情でした。
(2019/9/1作成)
つづく